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がくぽとめいこ

2008,12,10,Wednesday
「9/26 がくぽとメイコがしっとりお酒飲んでたらいいなあ。

がくめいじゃなくて呑み仲間。
二人で縁側で月見酒。
弟妹が寝た後で。
カイトは泊まりや28時終りのお仕事です。
がくぽはお隣さんで、夜ふらりと酒持参したり、メイコが呼んだり。
静かにぽつぽつ交わされる言葉。
過ぎない程度の酔いで、静かに帰っていくから、他の家族は知らないといい。
そんで、明け方帰って来たカイトは、ひとりで呑んでるメイコにお帰りって言われるんだ。

……そのうち書ければいいなー。」

……っていう話です。
ところで、殿の言葉遣いって、ござるとかでいいんでしょうか……。



 月が綺麗だから、なんてありきたりの理由で、下の弟妹たち三人が寝たあとに、私はひとり縁側へと出ていた。
 手には缶チューハイ、傍らには夕飯の残りのおかず。盆を使わずに直接床に置いて、行儀が悪いと見咎める上の弟は明け方までの仕事で不在だ。
 さして長居をするつもりはなく、ただ一息ついてみたかっただけの時間。
 窓のサッシに寄りかかりながら、満月よりわずかにたりない光をなんとはなしに眺める。静かな夜の気配だけがあたりに満ちていた。
 ふと浮かんだメロディに、唇をひらく。
 キイ。
 軋むような小さな音がして、私の中のメロディは外に出るのをやめた。
 頭を音の方へ向けると、予想通りの隣人の姿があった。さくさくと芝の庭を踏む音が近づいてくる。
「今宵の月に誘われもうした」
 その月に負けない優美な微笑みとともに掲げた手には、猪口がふたつと一升瓶がひとつ。
 いつからか気紛れな私の晩酌にさらに気紛れにあらわれるようになった隣人は、夜の静けさを乱すことなく座った。
 置かれた猪口に注がれる酒精を見、瓶を受け取って相手の猪口に注ぎ返す。
 音を立てない、杯を持ち上げるだけの挨拶を交わし、口に運ぶ。
 すっと喉を通る豊かな香り。きりりとした味なのに、咥内にはふんわりと甘やかさが残る。
「おいし」
 目元が自然と緩む。
「それは良かった」
 同じように穏やかな表情をした隣人が、つまみとも言えない酒肴に手を伸ばす。
「ありきたりで、申し訳ないわね」
 並んでいるのは、小ぶりなハンバーグ数個に、ほうれん草のおひたし、シーザーサラダの残りと、持ってきてくれた日本酒に適うものとはいえない。
「なんの。MEIKOどのの作るものはどれも美味なれば、十分でござろう」
「ふふ。ありがと」
 二杯目からは互いに手酌だ。変な気遣いはいらない。
 とくにそれ以上の会話もなく、月を眺め、夜風を聴き、時間が過ぎていく。
 二人で、というより、ひとりとひとりで、距離だけは近しく並んで杯を傾ける。
 私は、この寄り添うわけでも孤独でもない時間を、気に入っている。
 月が動き夜の気配が薄れ始める直前、ゆっくりと飲んでいた瓶の中身が半分になった頃、私の猪口が空になったのを見計らって、隣人は立ち上がる。
「……では、そろそろ失礼いたす」
「ごちそうさま。美味しかったわ」
 見上げてほほ笑むと、同じように笑う隣人が瓶と猪口を持つ。
「こちらこそ、美味でござった」
 会釈をして、来た時と同じようにさくさくと芝を踏んで、門をかすかに軋ませて帰っていった。
 私は、放置されてぬるくなった缶を手にする。
 そして、数時間前に口から出ることのなかった歌を、小さくささやく。
 数日前に歌った、子守唄。
「つーきーが、ゆめみーる、ぎんの……――」
 かすれた声が白んでいく空気に溶ける。
 気の抜けたチューハイを一口飲んで、続きを口にする。
 キイ。
 軋むような小さな音がして、私は口を閉じた。声が聞こえていたのか、迷うことなく芝を踏む音は、先ほどよりは大きく遠慮がない。
「ただいま、めーちゃん」
 へらりと笑った弟に、缶を掲げておかえりと言った。

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