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拍手用だったもの。2008-09-13 Sat 08:36



 甘い、バニラの香り。
 吸い寄せられるように近づけた唇に、柔らかな弾力を感じると同時に、輪郭をたどるように滑らせる。
 いたずらに舌先でくすぐるように舐めると、ほの紅く染まる。
 もっと食べたくて、つんと主張している可愛らしい(いただき)を、口に――。

 意識が、ぼんやりと浮上する。
 靄に包まれたような頭で、とても甘くて、美味しくて、幸せな夢を、ぬくぬくとした布団の中で反芻して――カイトは飛び起きた。
「うわあああああああっ」
 耳まで真っ赤にして頭を抱える。
 頭の中は、<なんで?>と<どうして?>が全力疾走で駆け巡っている。
「め、めーちゃんは、<お姉ちゃん>だよ、<家族>だよ? い、今までだってお風呂でかち合っても、ごめんっで、全然、平気だっ――~~~っ」
 いきなり開けるなと怒ったメイコの、バスタオルで隠しきれない膨らみやぎりぎりまで露わになった太ももがよみがえり、うっかり開けてしまった時に見たすべらかな背中や腰、ぷりんとした臀部まで思い出してしまい、体温が急上昇する。
「だ、だって、あんなに柔らかいなんて、知らなかったし! 張りがあるのに、ふよんてやわくて、吸いつくみたいにしっとりしてて――うああああああ~~」
 カイトはじたばたと身もだえる。
 ずっといっしょだった。
 姉弟のように仲がよく遠慮もなく、ひとつの布団で並んで寝たことだってある。

 それなのに。
 自分が引き起こした事態とはいえ、何事もなかったときのように、ただ守りたいだけの相手ではなくなってしまった。
「どうしよう~~っ」
 唐突に気付かされてしまった恋心を目の前に、カイトは途方に暮れた。

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